四国電、増える太陽光発電 迫る出力制限の影【日本経済新聞2019年11月3日】

四国で太陽光などの発電事業者に稼働の一時停止を求める「出力制御」の可能性が強まっている。天候で発電量が左右する太陽光の導入量が徐々に増え、8月末で2010年3月末の26倍の259万キロワットまで拡大したからだ。自然エネルギーを巡る四国電力の取り組みを追った。

揚水運転で余剰電力を吸収する四国電力の本川発電所(10月25日、高知県いの町)

10月25日、四国の中央付近に位置する水力発電の「本川発電所」(高知県いの町)を訪れると、起動指令が出た。午前11時から下池の水を上池へとくみ上げる揚水運転が始まった。下池から電気を使ってくみ上げた水のみで発電する四国電では唯一の純揚水発電所だ。

発電機は2つあり、出力は計61.5万キロワット。夏場は深夜に水をくみ上げて、日中の電力需要のピーク時に水を落として発電するが、春秋はこの運用を逆転させる日が多い。日中の太陽光の発電量を吸収するためだ。

同発電所の運用は太陽光の増加に伴い変わった。10年度の昼間(午前8時~午後5時)に揚水運転した割合はわずか7%だったが、18年度は80%まで上昇した。電力の需給調整で大きな役割を果たす一方で、四国電に大きな課題を突きつけた。

運転開始から35年以上が経過し「起動・停止の回数が増え、設備への負担が増している」。小谷英彰・本川水力センター所長の表情は厳しい。

同発電所は定期検査中のため、12月上旬までは昼間の揚水運転による余剰電力の吸収機能が使えなくなる。秋が深まるにつれて太陽光の発電量は落ちるが、出力制御の可能性が残る11月を乗り越えられるか、四国電は神経をとがらせる。

■電力余剰、抑える新技術

余剰電力の受け皿を設けようと、新技術の開発に挑む。企業や家庭にある蓄電池や電気給湯器などを電力の需給調整に組み込む新たな仕組みを構築、太陽光のさらなる普及拡大に備える。

余剰電力の受け皿として電気給湯器を活用すべく10月下旬から実証試験を始めた

香川県内で15軒の家庭の電気給湯器が10月下旬から昼間に稼働させる実証試験が始まった。溝渕大介・新技術活用プロジェクトチームリーダーは「家庭用の蓄電池よりも吸収能力がある」は話す。

電気給湯器で湯を沸かせば12キロワット時の電気を消費する。家庭に置く標準的な蓄電池の容量が10キロワット時なので、太陽光の余剰電力を吸収する効果は大きい。

四国電は翌日の太陽光の発電量を予測し、電気が余りそうな場合、電気給湯器の運転を遠隔で昼間に切り替える運用を想定する。日中の電力需要を生み出し、電力の需給を一致させるのが狙いだ。

実用化には契約書の見直しが必要になるほか、夜間と昼間の電気料金の差をどう補填するかも課題だ。今回は商品券で穴埋めする。実用化へのハードルはあるが、まずは昼間に湯を沸かして不都合が生じないか、1年間かけて家庭の意見を聞く。


電力の需給調整はこれまで、四国電が火力発電の抑制などで対応してきた。だが、今後の太陽光の増加を見据えると、電気を使う「需要側」の協力も必要になる。

四国電が12月から始める別の実証試験も需要側の協力が不可欠。企業や家庭が所有する蓄電池や電気自動車などの一括制御を目指して、まずは大型の蓄電池の遠隔制御に挑む。

実証試験では徳島文理大学など四国内3カ所の蓄電池の充放電を遠隔で操作する。午前9時~午後6時までを3分割して、様々なケースを想定した運用を試す。

電力業界では2021年度に周波数を維持するために電力を融通し合う「需給調整市場」が導入される見込みで、四国電の実証試験はこれを見据えている。同市場はまず電力不足への対応で動き出す見通しだが、余剰電力の発生時にも広がるとみられており、四国電はノウハウを積み上げる。

現在は電動フォークリフトにこの技術を搭載した蓄電池が使われている。数年後に回収し、四国内の企業に安価でレンタルするなどの事業モデルを描いている。

太陽光の増加で出力制御が頻発するような事態が生じれば再生可能エネルギーの事業者が育たなくなる。こうした事態を回避するためにも、太陽光を有効活用する今後の電力のあり方を、四国電は企業や家庭と共有していく必要がある。

辻征弥が担当しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51716520R01C19A1LA0000/
http://archive.md/jmdO7